2009 特別講演会(5月12日 静岡・浮月楼)
「木質パネル規格の国際化」【要旨】
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静岡大学農学部 教授・副学部長 鈴木滋彦氏
木質という言葉は間違って「きしつ」と呼ばれることもあるほど、一般には浸透していない。
木材は世の中に大量にあるので、
そのありがたさは認識されていないと言える。例として次の3つの「誤解」を取り上げてみたい。
・木は根から養分を吸って成長する。
・木を伐ってはいけない。
・腐るのはいいが燃やすのはいけない。
確かに木は根から水分や養分を吸っているが、木の成長は葉で光合成を
おこなうことによって促進される。また、木は伐らねばいけない。なぜなら木は成長時には温室効果ガスの二酸化炭素を吸うが、
成熟すると成長が止まり、二酸化炭素の吸収は少なくなる。
成長が旺盛な時点で伐り出し、材料として使い、炭素を固定化することが重要である。
また、木が腐る現象は、燃やすことと速度は違うが炭素の動きでは同じ現象である。
酸素のもとで木は腐ったり燃えたりして二酸化炭素を放出する。
木材は、主にセルロース、へミセルロース、リグニンからできており、これらを合わせて単純化すると木質はC4H6O3 となる。
大雑把にいうと4つの二酸化炭素と3つの水から、木質と4つの酸素を生じる。燃えたり腐ったりするときは、
この逆の現象が起きる。
これがカーボンニュートラルの考え方のもとになる。
木材の構造は、セルロースが鉄筋、ヘミセルロースが帯筋、リグニンが母材のコンクリートのような役割をしている。
リグナ・ハノーバー展のリグナもこのリグニンと同じ語源である。細胞の二次壁中層に、セルロースの結晶が
送電線のように少しよじれて形成され、
木の強度を保っている。また、広葉樹は主に木繊維が支えているが、針葉樹は仮道管が主役である。建物に例えると、
広葉樹は柱と水道管が別になっているが、針葉樹は柱と水道管が一緒になっているようなもので、広葉樹の方が
進化しているといえる。
また、アテのできる位置も針葉樹は張り出した枝の下側など圧縮応力を受ける側、広葉樹は枝の上側など
引張応力を受ける側にできて、
それぞれ違いがある。セルロースは水と馴染みのよい水酸基を持っていて、水分を吸収すると膨張する。
木材の繊維飽和点は28%
くらいといわれるが、その理由はわからない。細胞の構造からこれを「タガ」効果と呼ぶが、今ではタガを
学生に説明する方が難しい。
木質は優れた天然有機材料で、木質材料は軸材料と面材料に分けられる。軸材料とは集成材やLVLなど柱になるもの、
面材料は合板や
OSBなど板になるものである。これらの木質材料を生かして使うことが大切である。世界の木質パネルの
生産量は1980年頃に1億立方米に達し、
2003年には2億立方米、最近では2億5千万立方米を超え、更に増加傾向を見せている。用途は
住宅・家具・建設など住環境に
供されることが主体となっているので、生活に必須の材料であることを物語っている。原料は大径木から
中小径木、未利用材、
リサイクル材へと変わってきているが、今後は麦やケナフなどアグロファイバー(農産廃材)の利用も進むと考えられる。
本題の木質パネルの国際規格について、木材工業新聞の2009新春特集号に準じて話をしたい。
2001年、オーストリア規格協会にて
木質パネルの試験方法に関する作業部会が開かれていた。この部会は欧州のビッグボスといわれる
ハンブルグ大学のノアック博士が議長を務めており、
日本からは私と建材産業協会の上村氏が出席し、「木質パネルの湿潤曲げ試験法」を国際規格に押し上げるべく奮闘していた。
ノアック博士からは、いろいろ厳しい指摘を受けたが、この提案は、2005年に正式に国際規格として認められ、
今にして思えば
貴重な体験をさせていただいたと感謝している。
欧州標準化委員会(CEN)は1961年に設置されたが、最初のころは各国の利害の対立や欧州の過去の不幸な
歴史的背景もあり、
順調に進んだわけではないと聞いている。その中の第112委員会が「木質パネル」の規格開発を担当している。
また、
国際標準化機構(ISO)は229の技術委員会(IC)があり、その中の第89技術委員会「木質パネル」に私は参加している。
1999年当時は、ISO/TC89とCEN/TC112ともにDIN(ドイツ)が幹事で、議長はともにノアック博士が
務めていた。
CENとISO は相互に規格原案を承認し、標準化のスピードアップを図ることを目的に1961年「ウィーン協定」を結んだ。
これは欧州以外の国は規格原案の投票直前まで内容に関与できないことから問題があった。
ISOには一国一機関だけが登録でき、日本は日本工業標準調査会(JISC)が登録団体となっている。ISOは
各国が平等に一票の投票権を持つが、一方CENは国によって投票権に重み付けをしている。
ISOにおいては登録国数の多い欧州が有利となる。
そのため木質パネル関係者も
アジアの参加国を増やす努力を行ってきた。木質パネルについて日本とオーストラリア、ニュージーランドとの三国で協力して
APEC圏の気候・風土を考慮に入れた「JANS」と呼ばれる23の規格を完成させた。1999年のボルドーで開催された
ISO/TC 89木質パネル総会では、欧州とそれ以外の国との対立が露骨に現れ、おおいに荒れた。
2002年のオタワ会議において、
収拾の方向が模索され、試験方法は大方の一致をみることができた。2003年のパリ会議では、
ホルムアルデヒド放散評価法について、
JISおよびJASに由来するデシケーター法が、品質管理に用いる運用法としてISOの正式文書となり、
日本がTC89技術委員会に参加登録を行った際の、所期の目的は達成した。
最近では、会議はほぼ順調に進められ、2008年の第17回総会を日本に誘致することができ、
9月にさいたま新都心にて開催された。
次回は2010年春、中国にて開催される。正式な登録から10年になろうとする時期に総会を誘致できたことは、
木質パネルの標準化活動が一つの節目を迎えたということができる。
木質パネルは、右肩上がりで伸びてきて、生産能力は上がっているが、原料収集が難しくなってきている。
これからはダウンサイジングの時代とも思う。木質資源の質は落ちていくが、資源の量としては大きい。
今後の木質資源の重要性について再認識が必要である。
以上
「木質パネル規格の国際化」参考資料
鈴木滋彦教授 略歴









