2009 新春講演会(1月26日 名古屋国際ホテル)
「新しい国産材の加工利用技術」【要旨】
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京都大学生存圏研究所 所長・教授 川井秀一
新春の講演会にお招きいただき本当にありがとうございます。大変、光栄に存じております。
難しい時代に入り、大学も変わってきています。チェンジも変えるではなく、自らが変わる、
"Yes, we can." ということです。ご出席の皆さんも今後の展開・変化をいろいろとお考えのことと思います。
今日は「新しい国産材の加工利用技術」という題目で1時間余りお話しさせていただきたいと思います。
森林・木材の課題はさまざまありますが、世界に目を向けると熱帯林を中心にした森林の著しい減少、
エネルギーの枯渇、逆にいうと、資源エネルギーの囲い込みが顕著になってきたことなどがあげられます。
また、国内の森林・木材に目を向けますと、森林の整備と国産材の利用、リサイクル、バイオエネルギーなどの
課題があります。これらの課題は社会的・政策的に考えないと前に進みません。木材の合理的な使い方、
カスケイド(大きなものから小さいものへ順に使うこと)がされていないのが現状です。
森林・木材と地球環境を考えますと、問題として温暖化・異常気象・資源の枯渇・大気汚染・
エネルギー問題が見えてきています。これを森林・木材に関連づけますと、森林の活性化、適切な木材利用、
サステナブルな材料、長寿命住宅、リサイクル技術、バイオマスエネルギーなどとなります。環境問題から、
森林・木材が注目されていることを、日々実感しています。
国産材に目を向けますと、日本は国土の3分の2が森林、そのうち4割が人工林でして面積は
約1100万ヘクタール、樹種はスギ、ヒノキ、カラマツが多くなっています。しかしその多くは
十分な手入れがされていません。人工林の半分以上が間伐などの施業が必要とされていますが、
経済的に成り立たないため放置され、また、間伐しても、多くの材は生かされず、山に放置されているのが現状です。
日本の木材の自給率は、1955年までは100%でした。それから50年経ち今は約20%まで落ちています。
今の日本の森林は質の劣化はありますが、量的には増えています。平成14年の森林蓄積量は、
40億立方メートル以上あり、年間の木材需要量は約9千万立方メートルなので、約50年分の森林蓄積があると言えます。
戦後植えた森林を生かす時代になってきましたが、国産材は十分に使われていません。なぜ使われないかは、
外材とのコスト競争、性能重視の需要の変化、林業における構造的問題、たとえば小規模生産、
小規模所有形態などいろいろな要因があります。
一方環境問題を考えますと、日本は京都議定書で1990年をベースにして、CO2排出量を6%
削減することを約束しています。そのうち2.2%は省エネで排出量を抑制し、3.8%を森林吸収で
削減する計画です。3.8%の森林吸収を実行するためには、山を整備することが必要です。しかし、
取決めはデフォルト法が採用され、森林の成長がCO2の吸収とみなされ、伐採した時点ではCO2の排出と
みなされます。実際は、長期対応の木造住宅やリサイクル、都市の中の炭素貯蔵効果を認めてもらうことが
重要だと考えます。実際、都市の木材の貯蔵効果は森林蓄積の半分くらいを占めているといわれています。
山から木を下ろすことについて、加工システム、所有システムなどの要因で、まとまった材が下りてこないのが現状です。
森林伐採は、集約して、コストを下げなければ成り立ちません。日本の林業の1日1人当たりの労働生産性は、
3立方メートル、林業先進国・スウェーデンは2倍で、7.1立方メートル、カナダは3~4倍で
11.7立方メートルもあります。生産性を上げるには、機械化、作業道、細かい調査・計画などが必要となります。
山の所有者もお金が入ってくれば前に進むことができます。日吉町森林組合では、それらの取組みを行い、
目標10m3、実際の結果は8m3の生産性を上げ、単価も立方メートル6000円以下になって来ています。
木を生かす加工技術についてもお話したいと思います。地方自治体も、森林税、環境税、水源税などの財源確保をしており、
愛知県も来年から環境税が上がります。また、市民・NPOと連携していろいろな活動も活発になっています。しかし、
それだけでは不十分で、産官学で製品レベルの開発をもっとするべきです。永遠に環境のためにお金を払い続けるのではなく、
森林の循環とともにお金の循環も必要です。その例として、緑化基盤材をご紹介したいと思います。青森ヒバを使い、
粗いチップから、熱圧プレスで軽い0.2の比重ボードを作ります。生産は、年間3000立方メートルと量は少ないですが、
ミニプラントのような、単純な機械で作れ、地域、山元で製品化できますので、そのための輸送コストが多くかかりません。
今までこれらの製品は、ウレタンなどの化学物質で作られていたため、材料を間伐材に変えることにより、環境にも良く、
地域にも貢献できます。屋上緑化に使うことから、土壌の保水性、透水性、酸アルカリ、硬度などの項目が
重要な要素となりますが、その点木材は適しています。
スギの機能を生かすという面で、もう一つお話します。正倉院の保存性は有名ですが、そのなかの染色された着物、
家具は、今も鮮やかに色が残っています。その原因として、木材の温度湿度調整のほか、抗酸化機能があげられます。
日本書紀にはスギは宝物をいれる箱に使う、と書かれています。スギ材は、NO2、オゾン、
ホルムアルデヒドなどを吸収します。スギのNO2の浄化能力を実験すると、飫肥スギの心材木口の
吸収能力が高いことがわかります。木の新たな効用として、室内空気浄化作用、有害化学物質除去、
健康増進効果などが見直されており、その効果がある抽出成分を多く残すには低温乾燥などの技術も必要です。
また、板目、柾目面より木口面をあらわすと、その効果が高くなります。今まで木口の効果は、
あまり注目されていませんでしたが、今後木口面を表面化して利用することも考えていく必要があります。
その他、アレルギー予防への効果も注目されており、健康をキーワードにして、木をみつめていきたいと考えます。
木材は、低環境負荷の材料です。持続的な材料として、健康にも、省エネにも役にたち、耐久性もあり、
リサイクルも廃棄も簡単で、一番いい材料です。資源循環林(スギ)を基盤にした200年住宅として、
板・壁・柱など新しい材料、工法、設計で開発した木造住宅の実験も進められています。今後、
人間社会だけでなく、山の循環系の中で、木材・資源を考えていきたいと思います。
今日は、時間がなくなり、NPO法人・才の木の話はできませんでしたが、提言:木づかいのススメとして、
「日本でそだてた木を使おう、日本の森を元気にするために、それが持続可能な暮らしを実現する」を掲げております。
その実現のため、NPO法人、才の木を作っていろいろな分野の方と活動しております。今後も才の木の活動にご協力ください。
本日は、ありがとうございました。
新しい国産材の加工利用技術
川井秀一教授 略歴









